体罰=指導としていいのか。現代にも残る高校野球における指導者の「体罰」

はじめに

龍谷大付属平安高校は2月13日、硬式野球部の原田英彦監督が、部員に対して体罰を行ったと発表した。原田監督は、体罰を認め退職届を提出した。

原田監督と言えば、低迷していた龍谷大平安高校を再起させ、春の選抜大会に11回、夏の全国大会に8回、合計19回もの甲子園出場に導いた名将である。

高校野球における「体罰」は未だになくならない。なぜなくならないのだろうか。

高校野球における指導者からの体罰の事例

2024年 三重 菰野高校

菰野高校の硬式野球部の元監督

「練習試合中にミスをした部員に対し、昼食を取らせず、およそ2時間にわたり、断続的に坂道を走らせたり、去年11月、練習中にミスをした別の部員に腹を立て、至近距離からノックをして左腕のひじが腫れるけがを負わせたりするなどの体罰を行ったほか、部員に対する不適切な発言も行っていた」

引用

三重 菰野高校野球部の前監督 体罰などで減給の懲戒処分|NHK 東海のニュース

2023年 千葉 習志野高校 

習志野(千葉)の顧問

「部内体罰で今年3月30日から1カ月の謹慎。1年生部員1人のふてくされた態度に対し、右頬を1度平手打ち。自らの行為を別の顧問に報告し発覚した。」

引用

ふてくされた態度に右頬を平手打ち…高校9件の処分決定 日本学生野球協会の審査室会議 – 高校野球 : 日刊スポーツ

2024年 岐阜 中京高校

「岐阜の名門、中京では外部からの電話をきっかけにコーチの部内暴力(56歳、外部指導者)が判明し、1カ月の謹慎。以前から朝食を食べないことで注意をしていたが、4人が朝食を食べていないことを知り、野球部内の応接室に呼んで一発ずつ平手打ちをしたという。」

引用

なくならない体罰 名門の中京は朝食を食べなかった4人に平手打ち 昨夏甲子園出場校でも副部長が1カ月謹慎に/野球/デイリースポーツ online

体罰はなぜなくならないのか

  • 伝統的な昭和の指導方法の影響

専修大学松戸高校野球部の持丸修一監督は、体罰問題に関して

「令和の時代に残る「昭和の負の遺産」のひとつに、体罰が挙げられます。

 先日、関西の甲子園経験のある強豪校のベテラン監督が、部員への体罰を理由に謹慎処分を受けたと報じられ、世間に大きな衝撃を与えました。私は完全な部外者なので、この件に意見するつもりはありません。ただ、同監督とは交流があったため、正直、複雑な気持ちになりました。

 恥ずかしながらも、私も30年以上前まではこのような指導をしていました。」

「かつては「愛のムチ」などともいわれ、体罰を受けた選手やその親から感謝されることも少なからずあったのも事実です。しかし、今はそうもいかない。世間では「体罰は悪」という認識が浸透しています。」と述べている。

引用

昭和の負の遺産「体罰」を考える 「やったら一発アウト。即座に指導者を辞めるべき」(持丸修一/専修大松戸 野球部監督)(日刊ゲンダイDIGITAL) – goo ニュース

昭和の時代は「体罰」は指導の一環だと捉えられていたのだ。今の指導者は、このような指導を受けてきた世代や、その世代の指導者から指導を受けた世代が人たちが、現在高校野球で指導をしている。それが体罰がなくならない原因の一つである。

  • トップダウン型の組織

指導者が選手を従わせるいわゆるトップダウン型のチームであると、選手が指導者に発言するというのは難しい。なぜなら指導者に逆らえば、試合に出れない、あわや練習すらさせてもらえないというケースがあるからだ。だから選手が指導者に「暴力はおかしい」とは言えないのだ。

  • 証拠の集めにくさ

暴力を受けたと報告しても、証拠が不十分だと「体罰」や「不適切な指導」だと認められない場合がある。1対1で指導者から暴力を受ければ、その場の目撃者はいない。また軽い暴力であれば傷として残りにくく、証拠として不十分となることがある。

  • 個人よりも集団が優先される組織

一部の選手のみ、監督から体罰を受けているという場合、報告により監督が解任すると、チームの雰囲気の悪化につながる。選手の中には、監督を慕っている選手もいる。個人の問題なのに、なぜチーム全体を巻き込むのか、というようなチーム内での衝突が起こることも考えられる。そのため、報告したくてもできない選手が生まれるのだ。

高校野球は、ホームランを打ちたくても、バントのサインがでればバントの構えをするように個人よりも集団が優先される。このような体質が「体罰」がなくならない理由の1つだと考えている。

~指導者の声~体罰の原因、体罰をどうやってなくすか

専修大学松戸高校野球部の持丸修一監督

「(体罰の)最大の原因は、自分の感情をコントロールできないことにあると思います。納得のいかない出来事に直面したとき、感情的になって手が出てしまうのでしょう。

 私の今の意見は、体罰は一発アウト。即座に辞めるべきだと思います。専大松戸の指導者の間でも、この意識は何よりも徹底しています。

 では、体罰をしないためにはどうすべきか。

 子供たちは、大人の常識では考えられないような行動をすることもあります。まだ未熟であっても、ひとりの人間ですから、指導する側にも苦手に感じる選手はいるでしょう。キツく言いすぎても「暴言」になるし、厳しい練習は体罰と受け取られかねない。指導で気を使う場面は格段に増えました。

 だからこそ、冷たいことを言うようですが、目に余るような態度を取り続ける選手とは無理に向き合おうとせず、距離を置けばいい。のめり込み過ぎず、一歩引いて接するのです。

 生意気な選手は、それだけ内にエネルギーを秘めているのかもしれません。入学から引退まで2年半もあるのです。ポテンシャルを引き出すにはどうすればいいか、一時の感情に振り回されず、冷静に見極めてやる。体罰以外のアプローチはいくらでもあります。

 そうして試行錯誤するうちに、指導の選択肢に「体罰」は一切なくなると思います。」

引用

昭和の負の遺産「体罰」を考える 「やったら一発アウト。即座に指導者を辞めるべき」(持丸修一/専修大松戸 野球部監督)(日刊ゲンダイDIGITAL) – goo ニュース

慶応義塾高校森林貴彦監督

「自分が現役時代に指導者から体罰を受けたり、高圧的な言動をとられたりすると、それが自分の中のベースになってしまい、自覚がないままに同じ言動をとってしまう。このような負のスパイラルを生んでしまうカラクリがあるのだと考えられます。

また、自分自身の価値観を押し付けがちな点も看過できません。これは高校生を子どもだと思っていることに起因しています。「球児」という呼び方に顕著なように、高校生を子ども扱いし、指導者である自分は大人という意識のもとで、自然と上下関係を発生させてしまっているのです。

これでは本当の意味で、良いコミュニケーションを図ることはできません。一人の人間同士として意見交換するときには、お互いの関係性がフラットであることが大前提。しかし、上から目線になってしまうと、価値観の押し付けがいつまで経ってもなくならないのです。

大切なのは、選手あるいはチームがいかに成長していくか。成長とは、目先の結果である勝ち負けだけではなく、高校野球を通していろいろな経験をすることであり、その価値自体を高めていくことです。

このような基準、視点を持っていれば、上から押し付けるような指導には決してならないと思います。

高校野球には「時間がない」。それが事実であったとしても、選手を信じて待つ姿勢こそが重要なのです。」

引用

慶應監督が警鐘「高校野球で体罰」が消えない訳 自分自身の価値観を子どもに押しつける指導者 | スポーツ | 東洋経済オンライン

体罰のない高校野球をつくるためには

  • 指導者講習会の実施

県高野連が県内の指導者を対象に、持丸監督や森林監督、元日大三高監督の小倉氏など「体罰」のない指導を掲げている指導者を講師に招いて、講習会を開く。意見交換などを通して、指導者が学べる環境をつくることで、体罰のない高校野球をつくれるのではないか。

終わりに

高校野球を通して、強豪校の「体罰」に関する噂を耳にしたことがある。真相は確かではないが、もし本当であったら恐ろしいものばかりであった。

私は高校時代、幸いにも体罰を受けたことは1度もない。だからこそ、体罰を受けている選手を1人でも救いたいし、彼らに楽しく野球をしてもらいたい。そのために、自分に何ができるか追究していきたいと思う。

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